2010年10月27日水曜日

今までに見た中で最高の履歴書(その1)

先週はボストンキャリアフォーラムというものに参加してみた。
一緒に参加したのはロシア人と台湾人、共にMITの学生だ。


日英バイリンガル対象のイベントなので、
僕の英語の履歴書を彼らに添削してもらう代わりに、
彼らの日本語の履歴書を僕が添削させてもらった。
それ時みた履歴書が、今まで見たものとは明らかに一線を画すものだったので
ここで少し紹介しようと思う。
(彼のプライバシーを考慮して、多少抽象化しています)


【高校時代】
*SAT2400点
(※日本で言うセンター試験のようなもの。2400点満点)
*米国機械工学会の広報局にてインターン。
  その際に論文を2本執筆し、専門誌に取り上げられる等、かなりの好評価を得る。
*量子力学や解析学、代数、微積分などをコロンビア大学で学び、
  すべて高校生のうちに単位も取得。
*近くの大学の数学サークルで講師として大学生相手に、
  組み合わせ論、確率論、整数論、代数、離散数学、微積分、幾何学などを教える。


【大学時代】
*代数的位相幾何学、代数組み合わせ論、多様性解析学、非線形力学、波動力学、
  金融工学、ミクロ経済学などの授業を専攻、すべてでA評価を得る。
  中には大学院の授業も含まれている。
(※MITでは日本のように簡単にA評価は取れない。十分な予習、授業中の発言、テスト、論文すべてトータルで評価され、真に理解できていてもA評価を取れるのは一部)
*世界的に有名な数学のコンテストで、全世界でトップ5に入る。
(※学生対象ではなく、大学教授なども受験するコンテスト)
*数学モデリングコンテスト優勝
*ハーバードおよびMITの数学コンテスト優勝
*保険数理士の試験を満点で合格
*コロンビア大学で多光子顕微鏡を用いた光子の浸透深度の最先端な数学モデルの研究。
  論文も執筆し、専門誌に取り上げられる。
*MITのオープンコースウェア運用に携わり、
  原子核科学の講義ノートをLaTexを用いてオープンコースウェア用に書き直し。
*著名な金融アドバイザーの元で働き、
  投資信託やポートフォリオ分析、ETFなどを用いたコンサル実務を経験。


【スキル】
*上級レベルの日本語、ビジネスレベルのロシア語および英語
*Python, Sage, MATLAB, Mathematica, LaTeX, Photoshopを実務レベルで使いこなす。
*株式のテクニカル分析、オプションおよびオプションのスプレット取引、
  および先物、為替取引
*最先端数学を用いた、現在の主流であるアルゴリズムとは別のアプローチの
  新しいトレーディングアルゴリズムを開発。
*上記にまつわる特許3つ


彼は某有名投資銀行の面接を受け、その日のうちに内定をゲットしていた。
凄いなと思うのは、
"自分でまったく新しいアルゴリズムを開発し、それに関する特許も持っている、これを御社に教えてあげてもいいから、どのくらいの条件を提示できますか?"
と有名投資銀行相手に品定めをしていたのだ。

また、彼が言っていた言葉でひとつ印象に残っているものがある。
それは"満点以外は他人に言わないようにしている"ということ。

彼が言いたいのはつまりこうだ。
100点満点のテストで99点を取った者の実力は、当たり前だが"99点"である。
しかし100点を取った者の実力は、"100点以上"ということが証明されたに過ぎない。
つまり100点と99点には天と地ほどの差がある場合があるというのだ。
だから満点もしくは最高レベルの評価を得たものしか書かないのだそうだ。

言うは易し、行うは難しなのは言うまでもない。

問題は、彼が特別な存在なのではなく、彼のような人が多数派であること。

彼らのような人達と、日本から来た就活生、両方を見た上で
僕が今回のボストンキャリアフォーラムで感じた事は次回また詳しく書こうと思う。


続き
今までに見た中で最高の履歴書(その2)
今までに見た中で最高の履歴書(その3)

2010年10月17日日曜日

日本の科学技術力は上がっているか?

ついこの間、ノーベル化学賞を日本人2名が受賞した。
化学は自分の専門分野ではないので受賞内容について詳しい事はわからないが、
この受賞が日本ではちょっとしたお祭り騒ぎになっているという点について言及したい。

今回のノーベル賞受賞が日本の科学技術力向上を示したという事で騒いでいるのだと思うが、
果たして本当にそうであろうか?
(ここでは化学よりも広義の意味を示す科学技術力とする)

確かに国際競争も激化し人口が減少している昨今、
元々の強みであった科学大国としての軸を更に強化していくのは正しい方向性であると思う。

しかし今回の受賞では科学技術力の高さが証明されたわけではないと思う。

そもそも、この度の受賞は1979年に発表した研究に対して送られたものである。
30年以上も前のものなので、これを受けて日本の科学技術力が上がっていると判断するのは軽薄すぎる。

また、この論文の礎となった研究がなされていたのは日本ではない。
鈴木氏は長年北海道大学にて研究を行われてきたが、
1963年から3年間アメリカのパデュー大学に在籍しており、
そこでの研究が今回のノーベル賞受賞に結びついていると語っている。

根岸氏に至っては、研究生活の大半をアメリカで過ごし、在米歴は50年を超える。

つまり日本の科学技術力が上がっているのではなく、
単純に海外で最先端の研究をしていたのが日本人だった、というだけなのだ。

根岸氏はテレビの取材でしきりに若者が海外に出る事を勧めていたという。
これは様々な価値観や文化に触れるべきという意味もあるだろうが、
日本の中にいるだけでは最先端の事はできないということも示している。

たしかに近年日本で学び、研究して世界的に認められたものはほぼないのではないだろうか。
そう考えると今回のノーベル賞の受賞を日本人として単純に喜んではいられない。

これは科学の分野に限らず、あらゆる分野で言えることだろう。
単純に日本人が世界で活躍したからといって、日本が世界に認められたわけではない。

ただ単に、海外で学び、育まれた人が日本人だったというだけに過ぎないのだ。